一人法人の社長かつ行政書士でもある川島和秀のブログです。

【相続】相続税対策を意識しすぎると見落とす遺産分割対策。~不動産購入して相続税額減らすはリスクが高い~

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たぶん勘違いしている人が多いであろうと思えるのが、相続対策=相続税対策と考えてしまうことです。

 

単純に考えると、自分が世を去った後とはいえ、せっかく稼いで貯めたお金を税金で取られることを面白く思わないでしょう。

 

そのため、相続税を可能な限り少なくしようと考えるのは、極めて妥当に思います。

 

資産の大部分が土地であった場合などは、相続税対策を重視した方が良いでしょう。そうしないと相続のたびに土地が減っていくことになるからです。

 

野村證券時代のお客さまにそういう人は結構いました。資産が5億あるけど、現金が1億しかないみたいな場合です。

 

そういう場合は、相続税を下げることを早いうちから考える必要があります。

 

が、逆に納税資金が十分に確保できている場合は、相続税対策ではなく分割対策の方が重要でしょう。

 

この点を理解せずに、相続税対策として現金を不動産に変えるような行動をすると、残された家族が分割で揉めるということになる可能性がでてきます。

 

ある意味で、将来的に家族が揉めてバラバラになるような爆弾を残すという極めて悪い手段になりえます。必ずそうなるというわけではありませんが、注意する必要があります。

 

その理由をご紹介します。

 

相続税対策で土地・建物を購入するというのは分割対策としては悪手

 

もっとも、やってしまう可能性が高い悪手は、高齢になってから相続対策で「現金」で「土地・建物」を買ってしまうことでしょう。

 

現金で5000万もっているよりも、土地・建物で5000万もっていた方が相続税は安くなりえます。

 

相続税は低く見積もっても数百万円は下げられるでしょう。

 

相続税額だけみると、お得です。

 

さらに、マンションでも建てれば定期収入も入ってきますよ~♪と不動産会社に誘惑されるでしょう。

 

判断力の鈍っている高齢者なら、相続税も安くなり、かつ定期収入も入れば、すばらしいと納得して投資してしまう可能性がありえます。

 

不動産を買うお金があるなら、別に定期収入いらなくねえ?不動産買うと逆に自分の存命中のCASHは減るんじゃねえ?という冷静な判断を高齢者に期待するのは酷かもしれません。

 

残された家族のために!と考えているのであれば、実際に残された家族がどうなるのか?想定して判断するのが良いでしょう。

 

具体的に相続する人の方に目を転じて考えてみます。

 

相続人が2人いた場合、現金5000万なら2500万づつ分けることができます。が、不動産1つで5000万だったら分けることができません。

 

※分筆すればいいのは?というテクニカルな問題は、ややこしくなるので無視します。

 

相続税はたしかに安くなったのかもしれませんが、残された相続人2人で不動産をどうするんだ問題が勃発する可能性がでてきます。

 

もちろん、問題なく分割できる可能性もありますが、現金よりも不動産の方が確実に揉めやすくなるでしょう。

 

不動産を共有して相続すると、ほぼ利用できなくなるリスク

 

生々しい話になりますが、資産が1億あって、現金5000万と不動産5000万で相続人が2人であったら、どうなるでしょうか?

 

超ド素人的に考えると、現金2500万づつで不動産も持ち分半分で共有することを考えるでしょう。

 

が、しかし不動産は共有にすると、相続人1人の単独の意思で利用することがほとんどできなくなります。

 

賃貸に出すことも、売却することも単独ではできません。民法でそのように定められているからです。

 

出典:TAC みんながほしかった宅建士の教科書

 

つまり、賃貸に出したり、売却するのに、イチイチ2人で話し合って合意しないとできないわけです。

 

会社経営もそうですが、決定事項にいちいち会議をしなければいけないのは超面倒です。

 

相続人で仲が悪かったり、仲が良くても、一方が忙しくて時間が取れない状態であれば、その不動産は実質何もできないデットストックとして、固定資産税だけ払い続けることになってしまいます。

 

つまり、一般的に不動産を共有で相続するというのは悪手なわけです。

 

もっとも最悪なのが、不動産が共有された状態で、さらに相続がおきることです。

 

共有された部分がさらに次の相続で、最悪の場合は共有されます。ネズミ算的に共有の人数が増えるリスクがでてきます。その場合は、事実上、不動産を動かすことは無理になるでしょう。

 

今、全国で問題になっている空き家問題の一部が、この共有が原因で、どうしようもできなくなっていると推定されます。

 

不動産を共有しないとなると遺産をどう分けるんだ問題が発生しやすい

 

以上のように不動産を共有するのは、悪手です。

 

そうなると資産をどう分割するのか?問題が発生します。

 

上で例に出した資産1億で現金5000万、不動産5000万で相続人2人のケースで考えます。

 

不動産が共有できないとなると、必然と一方が現金5000万で、もう一方が不動産5000万になるでしょう。

 

不動産5000万が収益を生んでいるなら、ギリ穏便に分けられる可能性があるでしょう。

 

問題は不動産5000万が、収益を生まない不動産であった場合です。誰も不動産を持ちたくないでしょう。

 

固定資産税もかかるし、売ったら値段は相当ディスカウントされます。しかも売れるかどうかもわかりません。

 

最悪の場合は相続人で揉めることになるでしょう。

 

以上を踏まえると、相続税を数百万下がったかもしれないが、それ以上に大きな問題が発生しています。

 

おそらく相続人2人は、相続税が数百万多くても、現金のままの方が嬉しかったでしょう。という推定が働きます。

 

つまり、残した家族のために相続税対策で現金を不動産に変えるという行為は、残された家族にとっては嬉しくない可能性が高いと想像できるわけです。

 

不動産を購入するなら、家族のためや、相続税対策のためではなく、「自分が使いたいから」であるべきとも思います。

 

それであれば、自分のお金なので、「どうぞご自由に!」でしょう。

 

「家族のために!」と思うのなら、ハッキリ言ってしまうと、残された家族は「迷惑だから辞めてくれ!」と思う人の方が多いでしょう。

 

最悪は、「余計なことをしてくれた」と晩節を汚す結果となり、当人が天に召された後、誰もお墓参りをしなくなるかもしません。

 

※現金を相続税対策で不動産に変えるのには注意が必要

 

そもそもが、今の日本は少子高齢化で、かつ空き家問題で土地・建物が余り始めています。

 

よっぽどの良い条件がそろっていないと、基本、不動産の価値は下がると思った方が無難に思えます。

 

それゆえに、短絡的に相続税が下がるから不動産を購入するということはしない方が良いと思えます。

 

現金が不動産に変わると相続で何がおきるのか?という想像してみると見えてくるものがあるかもしれません。

 

人によって考え方は異なり、住んでいる地域、資産内容、家族構成によっては不動産の方が良い場合もあるのかもしれません。

 

が、私は以上のように相続税対策で不動産を購入する行為は原則悪手で実行するなら、相当な注意が必要と思っています。

 

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