一人法人の社長でもある川島和秀の日々の活動記録です。

配偶者居住権を利用した方がいいのはどんな人?利用する場合の注意点とは?

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日本はこれから高齢化社会を迎えます。

 

それをうけて、120年ぶりに2020年に改正された民法にも配偶者居住権・配偶者短期居住権という権利ができました。

 

背景は、相続が発生した場合に残された配偶者が、それまで住み慣れた自宅に住めなくなることに配慮した法律になっています。

 

※話を分かりやすくするために、細かい条件は省いています。正確ではありませんのでご留意の上読みすすめてください

群馬さん

 

ざっくりで説明すると、

①配偶者居住権・・・今まで住んでいた自宅にずっと住んでいていい権利

②配偶者短期居住権・・・自宅を配偶者以外の人が相続しても6か月は住んでいていいよという権利

です。

 

②配偶者短期居住権は、特段に何の手続きをしなくても残された配偶者に自動的に付与されます。

 

配偶者以外の人が自宅を相続した場合に、いきなり出ていけ!と言うのは酷です。

 

なので、6か月はいてはいいよと配慮で、6か月後には自動的になくなるので無条件に付与させても問題ないという発想だと思います。

 

が、①配偶者居住権は配偶者が死ぬまで自宅に住んでいていいよと言う権利のため、無条件に付与されるわけではありません。

 

遺言により、配偶者居住権を配偶者に付与する旨が書いておかないと利用できません。(遺産分割協議でも可)

 

この点が配偶者居住権を利用したい場合の注意点です。

 

ではどういう方が配偶者居住権を利用すると良いか?をご説明させていただきます。

 

配偶者が自宅を相続すると現金を相続できない恐れがあるとき

 

 

配偶者居住権を利用した方が良いと思えるのは、相続財産が自宅と現金で、配偶者が自宅を相続すると現金が相続できない場合です。

 

具体的にイメージは上です。

 

夫・妻・子の家族構成で夫が死亡した場合で財産が自宅6000万と現金3000万であった場合です。

 

この場合は法定相続分では配偶者1/2・子1/2で半々で分けることになります。

 

 

【総財産】自宅6000万+現金3000万=9000万

【妻相続分】4500万

【子相続分】4500万

 

現金が3000万しかないので、4500万をわけることができません。

 

そのため問題がでてきます。

 

自宅6000万を配偶者が相続すると現金が持ち出しになり生活苦になる可能性。

 

とりあえずは残された配偶者である妻が住み慣れた自宅6000万を相続すると1500万余分にもらいすぎになります。

 

妻・子は4500万ずつ相続できるわけので以下の状態になります。

 

 

【妻相続】自宅6000万(1500万多い)

【子相続】現金3000万(1500万少ない)

 

 

つまりは残された配偶者である妻は現金が相続できないばかりか、子供に1500万の現金を渡す必要がでてきてしまいます。

 

残された配偶者が現金をもっていればよいですが、通常は夫と生活を同一にしていることが多いため、そんなお金はないことがほとんどです。

 

そのため、現金がなくなり生活に苦労する状態になってしまいます。

 

そのときに利用すべきなのが配偶者居住権です。

 

配偶者居住権を利用すると自宅に住めて現金も相続できる

 

諸悪の根源は分割できない自宅6000万です。

 

配偶者居住権では、この自宅の価値を①所有権と②居住権に分割させることができます。

 

イメージだと以下の図です。

 

自宅を所有権3000万と居住権3000万に分解させることができます。

 

 

※厳密には半分ではなく配偶者居住権は計算方法があります。

 

 

出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4666.htm

 

国税のNO.4666 配偶者居住権の評価に詳しい計算例がのっています。

 

記載はしましたが、この辺りの計算は大変なので無視して、とりあえず配偶者居住権のメリットを理解するだけで良いと思います。

 

 

要は自宅に配偶者居住権を利用することによって所有権3000万と居住権3000万に分解することできることによって均等な分割ができるようになります。

 

配偶者居住権を利用しないと妻自宅6000万・子現金3000万というイビツな分割をせざるを得ませんでした。

 

【妻相続】自宅6000万(1500万多い)

【子相続】現金3000万(1500万少ない)

 

そのため、妻は現金を相続できないばかりか、子に1500万の現金をわたす必要まででてきてしまうマズイ状況でした。

 

それが配偶者居住権を利用すると以下にすることができます。

 

【妻相続】自宅居住権3000万・現金1500万

【子相続】自宅所有権3000万・現金1500万

 

配偶者居住権を利用することで均等に分割することができるため、子に1500万の現金を支払う必要もなくなります。

 

かつ、現金1500万を相続することもできます。

 

これによって自宅に住むこともでき、生活に必要な現金も確保できる状態になるというわけです。

 

これが配偶者居住権の威力です。

 

※自宅を相続すると現金が引き継げない、現金が持ち出しになるといった場合には配偶者居住権を利用すると残された配偶者が現金に困ることがなくなるので利用を検討する価値があると思います。

 

配偶者居住権を使うには遺言は必要

 

冒頭で書きましたが、便利な配偶者居住権は、配偶者短期居住権と違って自動的に権利が付与されるわけではありません。

 

民法1028条1項に配偶者居住権が適用される要件が書かれています。

 

第1028条

 

  1. 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。

 

一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

 

 

遺産分割の場合と遺贈(遺言)の場合と書かれています。

 

遺産分割による話し合いができるなら、そもそもが問題にならないので、あまり考える必要はない気がします。

 

遺贈(遺言)がないと配偶者居住権を利用できないということが注意です。

 

何もしなくても自動的に付与されるのは配偶者短期居住権の方で、この権利は、自宅に6か月は住んでいてもいいよという出ていくことが前提となるものです。

 

配偶者居住権を利用したい場合は、遺贈(遺言)が必要になるということを理解しておかねばなりません。

 

分割できなくて揉めそうだなと言う懸念があれば、遺言を書いて配偶者居住権を設定しておくのが有効と思えます。

 

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